トマトは世界的にも大規模に栽培されている作物の一つであるが、昨今の地球温暖化もトマト栽培に深刻な影響を与えています。特にトマトの花粉は熱に弱く、開花期の気温が日中32℃を超えると受粉がうまく行われず、実が実らなくなり、収量が激減してしまいます。筑波大学では以前に、トマト矮性品種であるMicro-Tomを用いた大規模変異集団の中から、夏の暑い時期に単為結果(受粉なしで実がなる)が促進され、さらに糖度が上昇する変異体が単離されていました。この変異体は、HWS (HAWAIIAN SKIRT)遺伝子に変異が存在することが明らかになっていました。また、GAD3遺伝子の自己抑制ドメインに変異を導入することでGABAが蓄積することが明らかとなっていました。
本研究では、このhws変異およびgad3変異を同時に導入することで、単為結果の促進という環境適応力の向上と、糖度、GABAの蓄積という品質向上を目標に、ゲノム編集により2つの遺伝子に同時に変異を導入しました。hwsgad3二重変異体(HGライン)のトマトを栽培、分析したところ、夏の高温時では、野生型は全く果実をつけなかったが、HGラインは12~13%の確率で単為結果による果実が形成されました(図)。単為結果によってできた果実は通常よりも小ぶりではあるものの、糖度が約1.8倍に増加しました(図)。果実内のGABA含量も約5倍増加したことから、糖度とGABA蓄積という品質が向上したトマトの作出に成功しました。
図の説明
上段左図:野生型とHGラインのトマト果実の図(春収穫)。
上段右図:単為結果により実をつけたHGライン果実の図(夏収穫)。
下段左図:単為結果果実において糖度の上昇が見られた。
下段右図:GABA蓄積量
【掲載論文】
Development of tomatoes with high sugar and GABA accumulation and parthenocarpic traits by introducing mutations in HWS and GAD3
Seungje Choi,Takeru Iwama, Misaki Kobayashi, Hiroshi Ezura,Kenji Miura
Plant Science Volume 371, https://doi.org/10.1016/j.plantsci.2026.113238

