Frontiers in Genetics誌へ渡邉和男教授らの論文が掲載

総合地球環境学研究所の小林邦彦研究員、本学生命環境系渡邉和男教授及び農研機構の土門英司上級研究員のグループによって、生物多様性条約や食料農業植物遺伝資源に関する国際条約など、多国間環境協定で議論されている遺伝資源に関するデジタル配列情報(Digital Sequence Information on genetic resource)を事例に、当該用語を巡る議論において、どのように科学的知見が国際条約の議論に作用しているか、まとめた論文が2020年9月16日に、Frontiers in Genetics誌に掲載されました。
2016年に開催された生物多様性条約第13回締約国会議でデジタル配列情報を巡る議論が開始され、デジタル配列情報(Digital Sequence Information:DSI)という用語を代用語とすることが決まりました。この議論の文脈において、DSIという用語は曖昧なままであり、少なくともDNA/RNA塩基配列データを含む広い範囲の概念を包含します。多国間環境協定において、その実施に最新の科学的知見を統合することは、条約実施にも貢献します。しかし、科学的知見を条約実施に統合するためには、条約の意思決定を担う締約国の見解がどのようなものであるのか、また、その見解が実際の交渉に作用するのかが、重要な要素となります。そこで、生物多様性条約及び食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約の交渉を事例に、多国間環境協定への科学的知見の統合に関する課題を支援する方法と手段を提案しました。
本論文により、科学的知見が適切に条約の実施に活かされることを期待しています。

【研究成果のポイント】
1.生物多様性条約、食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約における各締約国の見解と交渉過程における動向をまとめました。
2.専門家会合、科学技術補助機関、締約国会議という複数の条約における検討プロセスを通じて、用語に係る不確実性が減少されていくことが明らかである。
3.科学的知見を多国間環境協定の意思決定に統合させるためには、既存の条約制度の拡充や任意のピアレビューメカニズム等の新たな仕組みの整備を通じて、研究コミュニティと締約国との間で、様々な戦略を理解するための相互のコミュニケーションを確保するガバナンスを確立する必要がある。

【掲載論文】
Interaction of Scientific Knowledge and Implementation of the Multilateral Environment Agreements in Relation to Digital Sequence Information on Genetic Resources(遺伝資源のデジタル配列情報に関連した科学的知見と多国間環境協定の実施の相互作用)
Kobayashi K, Domon E and Watanabe KN

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