研究成果

【プレスリリース】不安定な化学構造の植物ホルモンを植物内に大量蓄積させることに成功

植物ホルモンなどの二次代謝産物は、構造が複雑で化学合成が難しく、植物内で大量に蓄積することも困難な化合物です。その一つであるストリゴラクトンは、植物の構造や発達を制御する植物ホルモンで、根圏における重要なシグナル伝達分子としてはたらきます。しかし、植物における蓄積量が非常に少ない上に、中性pH条件下では分解されやすいという、非常に不安定な性質を持っています。

 本研究グループでは、2018年に、植物におけるタンパク質大量発現を可能にする技術「つくばシステム」を開発しており、今回、これを使って、ストリゴラクトンの代謝に関わる酵素を過剰発現させることに成功しました。ストリゴラクトンの1つである4-デオキシオロバンコール(4DO)はβカロテンを出発物質として、D27、CCD7、CCD8、CYP711A2の一連の酵素によって代謝されることから、これらの酵素をつくばシステムにより、ベンサミアナタバコ葉に大量発現させたところ、2.1 µg/g新鮮重の4DO蓄積が認められました。これは、これまでの蓄積量の1,750倍に相当します。また、このベンサミアナタバコ葉を80℃で16時間乾燥すると、乾燥直後には1.0 µg/g新鮮重の4DOが蓄積されていましたが、その後1か月間、室温にて放置しても、0.9 µg/g新鮮重が残存しており、ほとんど分解されないことが示されました。

 これらの結果から、つくばシステムにより4DOを高蓄積でき、しかも長期間にわたって安定的に保存できることが明らかとなりました。

プレスリリース
生命環境系 三浦 謙治 教授

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