研究成果

野﨑翔平助教等の研究成果がBioscience,Biotechnology,and Biochemistry誌に掲載されました

植物が成長し、葉を広げ、種をつける過程には、さまざまな遺伝子と、それをもとに作られるタンパク質が関わっています。その中でも、GRF(Growth-Regulating Factor)転写因子は、DNAへの結合を介して、植物の成長を促す重要な役割を持つタンパク質です。これまでの研究で、GRFはGIF(GRF-Interacting Factor)という別のタンパク質と直接結びつくことで、その遺伝子発現を促すはたらきが強化されることが分かっています。

このGRF-GIF モジュールは、農業分野での応用が期待されています。例えば、イネの GRF4をGIF1とともに活性化させることで、窒素肥料の吸収効率が向上し(結果的に肥料の使用量を減らせる)、さらにお米の粒が大きくなり収穫量が増えるとが示されています。また、コムギの GRF4とGIF1を組み合わせた人工タンパク質を用いることで、植物の再生能力が向上し、ゲノム編集などの技術をより効率的に行える可能性があります。

しかし、GRFとGIFの相互作用がGRFのDNAへの結合力にどのような影響を与えるのかは、十分に解明されていませんでした。そこで本研究では、純度の高いタンパク質を使った実験 により、GIFがGRFのDNA結合力を安定化させることを示す生化学的証拠を発見しました。さらに、2024年にノーベル賞を受賞したAlphaFoldの高精度な構造予測を活用し、実験データと組み合わせることで、GRF内のGIF結合部分がDNA結合部分と直接干渉し、GRFのはたらきを制御していることを見出しました。特に、GRFは通常、自己抑制によって過剰なDNA結合活性を防いでいますが、GIFが結合するとこの抑制が解除され、GRFがより効果的にはたらくことが明らかになりました。

この研究成果は、植物の成長を調節するGRF-GIF モジュールの仕組みを解き明かす手がかりとなり、作物の品種改良や収穫量の向上に貢献することが期待されます。さらに、このメカニズムを活用することで、持続可能で環境負荷の少ない農業技術の開発が進むことも見込まれます。

研究代表者
筑波大学生命環境系
野﨑 翔平 助教

【題 名】 The DNA binding of plant-specific GROWTH-REGULATING FACTOR transcription factors is stabilized by GRF-INTERACTING FACTOR coactivators
(植物特有のGROWTH-REGULATING FACTO転写因のDNA結合は、GRF-INTERACTING FACTOR共活性化因子によって安定化される)
【著者名】 Nosaki S, Ohtsuka M
【掲載誌】 Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
【掲載日】 2025年2月4日 (オンライン先行公開https://doi.org/10.1093/bbb/zbaf016
【DOI】 10.1093/bbb/zbaf016

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