~新規アグロバクテリウムの分子育種に成功~
筑波大学生命環境系の江面浩教授、野中聡子助教のグループは、植物への形質転換効率向上を目指し、新規のアグロバクテリウム菌株の分子育種に成功しました。 植物形質転換は一般にアグロバクテリウムを用いて行われています。イネやタバコ、アラビドプシスなど実験植物種においては高効率安定的な系があるものの、その他の植物種では、品種や系統により形質転換が難しいものも多く存在し、高効率で安定的な形質転換系の開発が求められています。
アグロバクテリウムを用いた植物形質転換は、1.植物細胞への遺伝子の導入、2.遺伝子が導入された細胞の選抜、3.遺伝子が導入された細胞の再分化というステップを経て起こります。本研究グループは、最初のステップの遺伝子導入が、どの植物種においても共通するものであり、この効率化が幅広い植物種への形質転換を促進すると考えました。そこで、形質転換の最初のステップの効率化の鍵であるアグロバクテリウムの開発に取組みました。本研究で分子育種された新規アグロバクテリウムは、実験トマト品種’Micro-Tom’だけでなく、形質転換が難しいとされる食用中玉品種トマト’Moneymaker’および高バイオマス生産植物であるエリアンサスにおいても遺伝子導入の効率化に成功しており、今後、幅広い植物種において形質転換を向上させることが期待できます。
図1 本研究の戦略
γ-アミノ酪酸(GABA)がアグロバクテリウムに取り込まれ、遺伝子導入を阻害します。本研究では、アグロバクテリウムへGABA分解能を付与し、遺伝子導入効率を向上させ、形質転換の効率化を図ります。
図2 γ-アミノ酪酸(GABA)分解能付与の遺伝子導入効率への効果
(A)2つのトマト品種への遺伝子導入効果。 GABA分解能を付与したアグロバクテリウムの感染区(gabT)は対照区と比較して、トマト子葉片への遺伝子導入効率を高めました。(B)高バイオマス生産植物エリアンサスへの遺伝子導入効果。 GABA分解能を付与したアグロバクテリウムの感染区(gabT)は対照区と比較して、エリアンサスへの遺伝子導入率を高めました。
掲載論文
【論文題名】An Agrobacterium tumefaciens strain with gamma-aminobutyric acid transaminase activity shows an enhanced genetic transformation ability in plants.
アグロバクテリウムへのγ-アミノ酪酸分解酵素活性付与は植物への形質転換効率を促進する
【著者名】Nonaka,S.,Someya,T., Zhou, S., Takayama,M., Nakamura,K.and Ezura,H.
野中聡子、染谷龍彦、周莎、高山真理子、中村幸治、江面浩
【掲載誌】Scientific Reports doi:10.1038/srep42649