2) 同質倍数性植物種での遺伝子組換え体作成及び評価による遺伝子の発現・制御機構の解明による同質倍数体遺伝学の探求

被子植物は250,000種にのぼるといわれている。単子葉類では約70%, 双子葉類では約50%が倍数性植物種あるいは倍数化に起源していると考えられており、これはシダ類や裸子植物でも幅広く見られる。特に、同質倍数性は植物界においてユニークな特性である。同質倍数性の解析は対立遺伝子の重複等複雑な遺伝様式及び多様性を示すためこれらの解析は、精度の高い遺伝子マーカーの確立が必須である。同質倍数体の特徴点には、2倍体では1遺伝子座につき、最高2種類の対立遺伝子が存在するのに対して、例えば、6倍体では、最高6種類の対立遺伝子が存在することがひとつ挙げられる。特に、多数の複対立遺伝子が存在する場合には、対立遺伝子間の相互作用や、遺伝子座あたりの遺伝子型の数は、倍数化によって飛躍的に増大すると考えられる。また、Simplexのように1優性遺伝子が残りの3つの劣性対立遺伝子を全く隠す場合があり、倍数体の遺伝解析は2倍体に比べ複雑である。そして、2倍体モデル生物種やヒトの遺伝子解析でも複雑なQTL解析についても、倍数体でこれら量的形質を支配する遺伝子群がどのように調整制御されているかは倍数体独特の課題である。このような倍数性の特質を理解し、多数の倍数性種での遺伝的多様性を詳細に行うための遺伝解析法の擁立は大変意義あることと考えられる。当研究室では、自殖性の双子葉植物であるトマト等茄子科植物やモデル植物であるシロイヌナズナのゲノム情報を用いて、遺伝学的に相当異なる他殖性同質4倍性のジャガイモ及び他殖性同質6倍性(hexasomic hexaploid)サツマイモのゲノムでの植物病虫害抵抗性遺伝子群等の特定有用遺伝子群の対立遺伝子多様性解析や遺伝子組換え体を用いた発現解析による倍数体での遺伝子発現の制御解析を行っている。

同質倍数体の遺伝は複雑

後代の頻度推定と選抜はもっと大変! しかし、高等植物の多くは倍数体!!



同質4倍体ジャガイモでの遺伝子組換え体の作成と導入遺伝子のコピー数及位置効果の
評価:環境耐性誘導遺伝子の使用例:Arabidopsis由来のDREB1Aの例
(協力 JIRCAS—東京大学 篠崎グループ)



海水の3倍濃度の塩水でも生存するジャガイモ:矢印部分で耐性系統が生存している。
これらは、1個の組換え対立遺伝子の機能によって制御されている。



6倍体サツマイモを用いた組換え体の作成と除草剤無毒化の評価
除草剤を含む培地でもサツマイモは生存できる。これも組換え遺伝子座について
6倍体では6個の対立遺伝子が想定できるが、1個の組換対立遺伝子があれば
除草剤耐性が機能している。

前のページへ
次のページへ

To Top Page