研究領域:遺伝子多様性学 (遺伝子実験センター, 稀少植物遺伝子多様性・進化解析分野)
研究テーマ:植物遺伝資源の無限の価値を探る
1) 高等植物種での遺伝的多様性の保全と利用
生物多様性の基盤となる遺伝的変異について、高等植物を主体例として、遺伝学的な観点から実験研究を行っている。種内の遺伝的多様性に主点を置き、遺伝資源多様性について、東南アジアを主体に海外国際共同研究を行い、IPGRI(International Plant Genetic resources Institute, Rome, Italy, http://www.ipgri.cgiar.org/index.htm )などの国際研究機関とも協力をしている。
2) 同質倍数性植物種での遺伝子組換え体作成及び評価による遺伝子の発現・制御機構の解明による同質倍数体遺伝学の探求
高次倍数性・他殖性・栄養繁殖性植物は生産性が高い作物が多いが、遺伝子の解析が困難であった。このような同質倍数体植物のモデルとしてジャガイモやサツマイモを対象に、高次同質倍数体における複雑な遺伝様式や遺伝子発現の分子的解明を目的として、倍数体の分解と合成による倍数性操作法の確立、器官特異的発現遺伝子の機能ゲノム解析、分子マーカーの連鎖地図作成、BACライブラリー等のゲノム情報基盤の構築、病虫害抵抗性や低温糊化性デンプンなどのバイオマス関連有用形質の遺伝子解析などを行っている。
3) 遺伝的多様性を主体とした上記遺伝子組換え体植物のリスクアセスメント
遺伝子組換え体を利用するうえで環境影響評価は重要事項であり、生物多様性との関係が影響評価の主体になる。近縁種との関わりや種内の遺伝的多様性への影響の評価は、特に関連種が存在した時に重要な調査事項である。一方、倍数体での遺伝的多様性の評価は、その遺伝的特異性のため複雑であり、これを体系化するための知見を構築している。
4) 社会、経済、法律及び政策の観点からの植物遺伝資源及びバイオテクノロジーの取り扱いについての学際的総合研究
遺伝子多様性に関わる保全、産業利用や知的所有権ついて社会、経済、法律及び国際関係の観点を含め総合的に調査も行っており、 国連大学高等研究所(Institute of Advanced Studies, United Nations University, Yokohama, Japan, http://www.ias.unu.edu/index.cfm )と共同研究を行っている 。特にbioprospecting / access and benefit sharingについての調査研究行っている。
研究分野関連の講義では、生物多様性と遺伝的多様性の概論、21世紀の戦略的な国家資源としての遺伝資源の学際的論議、遺伝子多様性の生物学、遺伝的多様性の測定について遺伝学的理論及び分子生物学を主体とした測定技術の紹介、生物多様性の保全について学際的アプローチによる生息域内保全及び生息域外保全、ジーンバンク、バイオリソースセンターと植物園などの関係の紹介、保全の技術の解説及び遺伝的多様性の産業利用と国際的関心事項の総合討論を行い、基礎的理解を得るような機会を提供している。