研究内容の紹介
ユーカリが低温で受ける傷害の予測手法を確立
ユーカリ属林木は成長が早く、二酸化炭素固定能が高いため産業植林に広く利用されていますが、低温に弱く植林可能地域が限られています。本研究では筑波大学T-PIRCの隔離ほ場でユーカリ (Eucalyptus globulusを6年間栽培し、葉の健全度と気温の関係を分析。その結果、過去46日間の日最高気温が9.5℃以下の日数が葉の健全度の80%以上を説明する回帰モデルを構築。このモデルを用いた植林可能域の予測は既存の分布データと一致し、植林可能域の予測に有用性を示しました。 (Chubachi, Oguchi et al., 2022を改変)(プレスリリース)。
シロイヌナズナ由来のAtGolS2遺伝子を導入したポプラの隔離圃場における乾燥耐性評価
種子の乾燥耐性に関わるラフィノース属オリゴ糖合成の鍵酵素であるガラクチノール合成酵素をコードする遺伝子(AtGolS2)を導入した組換えポプラを隔離ほ場で栽培した。本試験では、土壌水分量と非組換え体のQY値の関係を機械学習の手法を適用してクラスタリングすることで、環境の乾燥ストレス段階を3レベルに分け、各レベル毎に、組換え体及び非組換えの乾燥ストレス耐性を比較した。その結果、AtGolS2導入組換えポプラは、深刻な乾燥ストレス状態におけるストレス傷害が非組換え体よりも有意に軽減していることが明らかとなった (Shikakura, Oguchi et al., 2022を改変)。
アイスプラント由来の新規耐塩性遺伝子を導入したユーカリの特定網室での耐塩性評価
塩害地を模した条件 (週3回の70 mM NaClを底面潅水) で約6か月間栽培したユーカリの様子(左)とバイオマス生産量(右)。McRBP発現ユーカリは、同条件で栽培した非組換え体と比較し、高い健全性及びバイオマス生産性を示す (Tran, Oguchi et al., 2019を改変)。
細菌由来のコリンオキシダーゼ遺伝子導入によるユーカリの耐塩性の増強
細菌由来コリンオキシダーゼ遺伝子 (codA) をユーカリで発現させると適合溶質として働くグリシンベタイン含量が増加する。発現コンストラクトの改変により、codA遺伝子の発現量を増強すると、グリシンベタイン含量も増強し、結果、耐塩性もより向上する。写真は、塩害地を模した条件で約6か月間栽培したユーカリの様子。 (Tran, Oguchi et al., 2018を改変)。
細菌由来のコリンオキシダーゼ遺伝子導入遺伝子組換えユーカリの隔離ほ場と生物多様性影響評価の一例
細菌由来コリンオキシダーゼ遺伝子 (codA) を導入した遺伝子組換えユーカリを筑波大学遺伝子実験センターの隔離ほ場で2008年から約4年間、第一種使用実験を実施し、周辺環境の生物多様性に与える影響の評価した。試験栽培中、様々な季節で土壌中の微生物量や葉のアレロパシー活性について、組換えユーカリと非組換えユーカリの間で比較することで、遺伝子組換えによって生物多様性に対する潜在的な影響に違いがないことが確認された。(Oguchi et al., 2014を改変)
カワラタケ由来のリグニン分解酵素にセルロース分解菌由来のセルロース結合ドメインを融合した人工融合酵素 (Lac-CDB) によるリグノセルロース植物バイオマスの改良
Lac-CBD融合遺伝子の導入はリグニン量や植物の構造に大きな変化を生じさせること無しに、酵素糖化性を向上することがモデル植物 (イネ、シロイヌナズナ) を用いた実験で確認している。現在、林木への適用について研究を進めている (図はシロイヌナズナを用いた結果の一例: Iiyoshi, Oguchi et al., 2017より改変)
多重PCR法による遺伝子組換えトウモロコシ8品種の一斉定性検知技術
わが国で食品としての利用が承認されている遺伝子組換えトウモロコシ8系統を一度のPCRと電気泳動で同時に検知することが可能な多重定性PCR法を開発しました。本法は、厚生労働省が通知する「組換えDNA技術応用食品の検査方法」の「参考検査法:遺伝子組換えトウモロコシ系統判別マルチプレックス定性PCRの検査」として収載された。(Onishi, Oguchi et al., 2005より改変)